日本の航空会社 - 今後の行方は?

2022/12/28 4:25:04 / by Becca Rowland

日本の航空会社は今後どのようになっていくのでしょうか。今回は、日本の航空業界特集3シリーズの初回をお届けします。旅行事業の回復が強化される中、日本の航空会社、空港、そして観光業界の動向を探ります。

2022年も残すところあとわずかとなりました。新型コロナウイルス感染症のパンデミック開始から3年近く経ち、ようやく日本への旅行が自由にできるようになり、日本の航空会社の総座席数は着実に回復をしています。

202212月の座席供給数は3000万席近くに達し、これは2022年1月比で27%もの増加ですが、3年前の2019年12月の総座席数の82%に過ぎず、まだ大きく及ばない状態です。2022年通年の総座席数は、2021年比で41%増でしたが2019年比では30%の減少です。

 

来たる2023年、日本の航空業界の状況はどのように変化し、何が期待できるのでしょうか?

 

 

全日空ホールディングスと日本航空による支配的な地位が継続

日本の航空エコシステムにおいて、全日空と日本航空の2大航空会社グループの優位性はずっと変わらないままです。2022年に運航した総座席数全体のほぼ4分の3が、これら2社およびその子会社で占められています。

この2社のうち、全日空ホールディングスの方が規模が大きく、2022年12月の日本の全定期便総座席数の内訳をみると、全日空およびその100%子会社の格安航空会社ピーチ・アビエーションが占める割合は、それぞれ34.4%および7.6%となっています。なお、同社のバニラエアは2019年10月にピーチと統合し、バニラエアによる就航は停止しています。

一方日本航空グループは、会社数は全日空より多いのですが、総座席数のシェアは小さいです。2022年12月の総座席数はこのグループ最大手の日本航空が26.4%、次いでジェットスター・ジャパン(3.7 % )、スプリング・ジャパン(0.2 % )、そしてZIPAIR (0.2 % )となっています。2021年7月には、日本航空は格安航空会社スプリング・ジャパン(旧社名「春秋航空日本」)の筆頭株主となり、これとほぼ同時期から、子会社間の連携を強化すると発表しました。

この2社以外で最大の航空会社はスカイマークです。2015年に東京証券取引所上場廃止となりましたが、つい最近上場復帰となりました。また本航空会社は更に多くの航空機を購入する意向を示しており、現在運用中のボーイング737型機29機に加えて12機追加する可能性があるとして、日本市場における成長の可能性を示唆しています。

 

日本のLCCのシェアにほぼ変化なし

世界の他の地域では、LCCはFSC(フルサービスキャリア)よりも速く総座席数が回復しています。一方、日本の市場構造は例外的であることを意味します。

パンデミック前のLCCのシェアは約20%でした。2020年末から2021年初めにかけての乱高下を経て、2022年は22~23%に近い水準に落ち着きました。1月の21.3%、そして2月の24.0%をピークに、12月は22.7%と、この1年は比較的大きな変化のない推移です。

この背景には、日本のほとんどのLCCの総座席数が何らかの形でFSCと結びついているという珍しい構造があります。2013年に起きたエアアジア・ジャパン(エアアジアと全日空の提携会社)の提携解消は、LCCとFSCの出身者が異なるアプローチをとったことによる経営陣の衝突が原因だとされています。ブリティッシュ・エアウェイズのGo Fly、エールフランスのJoon、インターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)のLEVELなど、FSCがLCCを設立した歴史の中には期待通りにいかなかったものがありますが、一部の航空会社は、FSCとLCCの両ブランドのポートフォリオが成功することが示されています。シンガポール航空グループはその一例で、シンガポール航空はスクートと共同で運航しています。それでもここ数年、シルクエアーブランドの廃止など、グループの再編が進んでいます。

日本ではLCCセクターの統合も進んでいます。ピーチ・アビエーションとバニラ・エア(ともに全日空の子会社)は、ピーチ・アビエーションを存続ブランドとして統合しました。LCCのエア・ドゥとソラシドは、202210月に統合。日本航空はジェットスター・アジア、スプリング・ジャパン、ZIPAIRのLCC3社に出資していますが、今後、ある程度の統合が進むか注目です。この3社はそれぞれ異なる機種で運航しています(ZIPAIRはボーイング787を4機、ジェットスター・ジャパンはA320を20機、スプリング・ジャパンはボーイング737-800を6機運用)。またそれぞれが異なるマーケットで就航しています。

 

しかし基本的に、LCCの今後の成長は、LCCがFSCとどの程度競合が許されるかによって変わってくるでしょう。ピーチ・アビエーションを例にとってみましょう。この航空会社のキャパシティ上位3路線は以下の通りです。

  1. 札幌(CTS)-東京成田(NRT)
  2. 札幌(CTS)-大阪(KIX)
  3. 福岡(FUK)-東京成田(NRT)

札幌(CTS)-東京成田(NRT)では、2021年3月以降ピーチは日本航空と全日空のどちらとも競合していませんが、来年1月から両社とも運航を再開するようです。札幌(CTS)-大阪(KIX)では、2020年10月以降レガシーとの競合はありませんが、スケジュールによると2023年1月に日本航空が復便します。一方、札幌(CTS-大阪(KIXにおいては、ピーチは過去3年間FSCとの競争にさらされてきました。

 

日本の国際線総座席数の回復に見られる遅延

10月に国境が全面再開したばかりの日本ですが、各航空会社が国際線の運航パターンを再構築するのに時間がかかっています。2022年の総座席数は2019年比で30%減でした。その内、国内線の総座席数は10%減にとどまった一方、国際線の総座席数は通年で77%減となりました。もちろんこの1年でポジションは改善され、2022年12月時点では、国内線の総座席数は2019年12月時点からわずか2%減、国際線の総座席数はそれでも54%減です。

国際線では、中国と香港は事実上閉鎖が続いており中国と日本を結ぶ便は回復していませんし、中国のキャリアも数が足りていない状態です。中国南方航空と中国東方航空は、2019年当時のわずか1%の総座席数で運航しています。

国際線最大手の航空会社である全日空は、2022年12月に国際線47路線を運航しており、これは64路線を運航した2020年3月以来の多さです。データをよく見てみると、航空会社の路線数を大きく増やすのではなく、まず総座席数を増やすことに注力してきたことがわかります。しかし、ようやく1路線あたりの平均座席数が新型コロナウイルスに国際線が影響を受け始める前と同程度になったことで、2023年は国際路線数を増やすことを考えるべきかもしれません。

パンデミック前の路線の中で現在も就航していない最大の路線は(中国向け路線を除く)、ハノイ-羽田で、羽田-ミュンヘン、デュッセルドルフ-成田、成田-台北が続きます。羽田と成田で国際線としての利用が変化していることも事実で、運休中の路線で最大規模のものに羽田-バンクーバーがありますが、一時的に復活した後2022年3月に成田-バンクーバーに変更となりパンデミック当初は存在していなかった路線となっています。

日本航空も同じような状況です。2022年を通じて国内線の総座席数が若干増加した一方、国際線の月間総座席数は倍増となりました。路線数の追加がわずかであったため、国際線1路線あたりの総座席数は年初の80%増となりました。

2023年には特に国際市場における回復が更に進むと考えています。大きな問題は、中国の国境がいつ完全に再開するのかということです。ZIPAIRがLCC中長距離国際線のビジネスチャンス開拓に注力する一方で、重要なのは国内、そして日本に近い市場です。中国が再開すれば、中国から日本への旅行需要が大幅に増加すると予想されます。日本の航空会社においては、それに向けた準備ができていることを願っています。

 

 

Becca Rowland

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