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2022年の定期航空便の総座席数予測は2019年比 87%に

作成者: OAG|2022/11/24 4:24:07

各航空会社の第2四半期決算発表が始まりました。多くの航空会社にとって売上高が過去に報告された中で最も高く、世界中の航空会社にとって好調なシーズンであったことが示されました。

しかしその結果、営業コストも過去最高となってしまいました。経済問題、不安定な為替市場、政治問題、冬が近づくにつれて忍び寄る新型コロナウイルス感染症の脅威、そして継続的な中国の閉鎖といった懸念…これらが払拭されると良いのですが。この冬はあらゆる事業レベルで強い逆風に直面するでしょう。しかしこの業界は、最も困難な時期でさえ、市場の強さを証明してきたのです。

市場が継続的に安定してきていることは、航空会社の総座席数が年末までほぼ前週比横ばいに推移し、若干の増加が報告されていることから分かります。(ただし、これは心理面での大きな動きというよりも、中国からのスケジュール通知の遅れが反映されたものです)。

弊社が繰り返し言い続けてきたことなのですが、年末までに重大な出来事がなければ、最終的に今年の総座席数は2019年の約87%になるというのがコンセンサスです。2022年の定期便総座席数が48億席に達すれば、2021年比で31%増となります。また、2019年と同等の水準に回復するために必要とされるのは、そこからわずか20%の成長です。今の環境ではおそらくこれは大きな課題でしょうが、ここは頑張りどころだと言えます。

 

定期航空便総座席数 - 3ヶ月先見通し

 

今週のキャパシティについては、先週増加した中国のキャパシティが、中国全土の新たなキャパシティ減少によって一掃されてしまい、2週間前の水準に戻った形となりました。グローバルでのキャパシティは、前週比3.3%減の9,400万席にとどまり、その多くは北東アジアの減少が反映されています。中東欧も29万席の減少(-8%)となっており、全体としてあまり芳しくありません。東欧が16%減少し、これにはすべてロシアが関係しています。

2022 最も利用者の多い航空路線: 世界で最も利用者の多い航空路線 |ダウンロード

一方で南米南部の総座席数は前週比6%増となり、より通常に近い水準に回復したことによってこの「痛み」を若干和らげる形となりました。しかしこういった地域市場全体で見られる「揺らぎ」は過去のものになりつつあります。北東アジアと南米南部だけは、上下両方向の揺らぎに直面し続けているものの、この週次データでは世界のほとんどの地域で安定性が出てきたことが特徴的です。

 

地域別定期航空便総座席数

 

タイの2022年総座席数が3倍に増加

夏シーズンが終わり、ギリシャが上位20国から脱落した一方、20位を維持しているタイ。タイはこの1年で総座席数が3倍に増加し、冬シーズンの終わりまでには更に回復し続けると考えられます。もし中国から海外渡航に関する何らかの妥協案が出されれば、なおさらです。

 

市場別定期航空便総座席数 - Top 20

 

日本:国際線座席数の変化

パンデミックの経験から分かったことは、特定の市場が渡航規制の緩和を発表しても、以下のような理由から必ずしも航空総座席数が直ちに増加するとは限らないという事実です。

  • 周辺の主要な市場の閉鎖が続いている。
  • 営業資源(人的リソース)が不足している。
  • 航空会社と市場ともに慎重な姿勢を維持している。

日本がその一例でしょう。先週、日本への外国人旅行者の入国が自由になりましたが、興味深いことに、ドルに対してこれほど円安になったことは長らくありません。

下の表は、日本が入国者総数の上限撤廃を発表してからの数か月間で、日本から主要国際市場への総座席数がどのように増加したかを示しています。当然のことながら、韓国、台湾、香港といった近隣マーケットへの路線に大きな恩恵を受けていますが、アメリカ、オーストラリア、イギリスといったその他の地域でも、12月までにある程度の回復が見られます。ただし注意点としては、やはり一部のマーケットへのフライト時間が長くなっていることです。今週末のエールフランス、羽田発パリ行の便は、東に進み北米上空を通過する北極圏ルート(ポーラールート)で運航し、所要時間は13時間31分でした。これは2019年に比べて約1時間長くなっていますが、注目すべきはそのルーティングです。 

 

日本発国際線総座席数の推移

 

航空会社のスケジュールに戻ってきた安定感

次に、ここ数週間で各航空会社のキャパシティがどの程度安定してきたかを調査しました。95日の週次定期航空便キャパシティと現在のデータとを比較すると、各航空会社の定期便がどれ程変動したか、あるいは変動しなかったかが分かります。

 

中国系の航空会社を除けば、このリストのほとんどの航空会社において、この7週間の比較期間中の変動は2%以内に収まっています。パンデミック最盛期には、このような期間に10%を超える総座席数の変動が定期的に見られていましたので、それに比べると現在の状況は確実に落ち着いて来ています。

 

航空会社別総座席数変動 - Top 20

 

IIATA夏季シーズンが残り 2 週間を切った今、各航空会社はもうシーズン終了のメンテナンス作業を計画しており、通常は 10月末から12月中旬までの閑散期にキャパシティが縮小されます。11月末は、米国では家族や親族が集まる感謝祭の時期です。

したがって、わずか数週間先の各航空会社キャパシティですが、今週に比べて驚くほど減少します。ライアンエアーは25%減、イージージェットは27%減、Jet2.comは何と45%減という座席数で運航します。これらはパニック的な減少ではなく、毎年見られるキャパシティの推移が反映されたものです。これら全てを踏まえて、2022年夏の運航プログラムは、多くの航空会社にとって記録的な収益増加の期間となりました。また、その他の多くの航空会社や空港は、人的リソース確保の戦いが日々繰り広げられました。2023年夏は更に右肩上がりになるでしょうか?おそらくそうなるでしょう。

しかし、その前に、この冬を乗り越えなければなりません!

皆様、健康に気を付けてお過ごしください。

 

編集者注:本ブログの見出しは20221019日に更新され、「2022年の航空便キャパシティ予測は2019年比87%に」から「2022年の定期航空便キャパシティ予測は2019年比 87%に」に変更されました。