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航空総座席数に地域的な回復傾向も

作成者: John Grant|2020/03/30 14:51:18

2021年東京五輪開催に向けて

航空業界は現在、世界中に拡散する新型コロナウイルス(COVID-19)の影響と生き残りをかけて戦っています。10週間のうちに、週あたり約3,700万席分の売上が市場から消え去りました。今週には、米国の航空会社と中東の大手航空会社がさらなる変更を申請するため、この数字は4,500万席に近づくと思われます。このことは、日本発着便にどのような影響を与えるのでしょう。

12カ月前、羽田空港で発着回数を39000回増やすことが発表されたときには、大きな関心が寄せられました。東京2020五輪の準備過程の一環として、米国、ヨーロッパ、一部の地域市場からの運航が増加しました。先週末には、新たに増やした発着枠が最初に使用されるはずでしたが、残念ながら、しばらくの間は使用されることはなさそうです。

以下の表のとおり、日本国内線市場の強さと国際線総座席数の間には、驚くほど明確な違いがみてとれます。国内線の座席数も影響を受けてはいるものの、世界の他の国内市場と比較するとよく持ちこたえており、8.7%の座席減にとどまっています。日本で現在どれだけの国内線座席数が供給されているかを考慮すると、航空各社が短期的に欠航を実施したにしても、間違いなくほぼ予定どおりの座席数で運航する意図があったことが分かります。

表1 - 2020年1月20日~3月23日までの日本の予定座席供給量

出典: OAG Schedules Analyser

 

しかしながら、国際便については、週に約90万座席すなわち定員の69%強の座席数減という大きな影響に見舞われています。日本向けの各国際市場が深刻な影響を受けており、東京2020五輪中に多くの観光客が来日することが見込まれていた各国で70%以上の座席数が削減されています。中国だけでも週30万席以上が削減されており、香港では約91%もの座席数の落ち込みが見られます。

表2 - 2020年1月20日~3月23日までの日本発の国別座席数

出典: OAG Schedules Analyser

 

IATAによるCOVID-19の影響の最新評価から分かったことは、航空業界の営業収益が昨年より約2500億米ドル減少することです。これは、多くの航空会社が資本利益率8%未満の粗利で営業した場合の年間合計営業収益の約44%に相当します。このような状況を考慮すると、航空会社が東京2020五輪への協力に必要な国際便の座席数を増強できるだけの確信も現金も持てないことは明白です。これだけでも、五輪延期の理由となります。ただし、重要なのは、いつこの座席数が回復し、 はたして2021年の五輪開催に間に合うのか、です。OAGでは間に合うであろうと考えており、その理由は以下のとおりです。

早くも中国と韓国の両市場では、総座席数回復の傾向が早くも表れています。中国では総座席数が6%増加し、韓国では今週、総座席数が再度プラスに転じました。両国にとって、日本は歴史的に主要な貿易相手であり、旅行者にとっても人気の旅行先であるため、日本は、総座席数回復の開始により恩恵を受ける最初の市場の1つとなることが見込まれます。当然ながら、その回復にどれくらいの時間がかかるかが重要な問題となります。

グラフ1 - 2020年1月20日から3月23日までの中国市場と韓国市場における予定座席数の変化率

出典: OAG Schedules Analyser

 

OAGのデータを使用し、週ごとの総座席数減少の傾向を見たところ、早期に回復傾向を示している市場を加味すると、世界の総座席数は20204月末頃に週あたり3,900万座席で底を打つと予測しています。なお、世界の総座席数は、1月時点では約1600万座席でした。その時点から、OAGでは、週あたり2%4%の範囲の複利成長率を適用して、総座席数が完全に回復することが見込まれる時点を特定しています。もちろん、総座席数は航空業界の回復状態を見る場合の一要素にすぎません。旅行と、さらに重要な海外旅行の両方に対する消費者の安心感が回復に向かう初期段階では、旅行に対する需要の回復がかなり緩やかとなることも考えられます。

チャート2:2020年~2021年の世界の想定座席数回復率

出典: OAG Schedules Analyser

 

週ごとの回復率が4%の場合、世界の総座席数が10月末までに20201月と同レベル、またはそれ近くまで回復する可能性があります。一方、回復率がより低く、例えば2%の場合、回復時期は20215月、つまり2021年の夏季五輪の直前にまで延びます。座席数回復への道のりは平坦ではありませんが、まず北東アジア市場から回復の兆候が出てきており、この兆候が今後数週間で拡大することが予想されます。また、航空総座席数の回復は、世界がCOVID-19を克服したことを意味するため、1年延期となった2021年の東京五輪は祝福ムードの中、素晴らしい大会となるのではないでしょうか。

 

これまでのCOVID-19に関する総座席数の経過の詳細については、当社英語のホームページをご覧ください。