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世界的のキャパシティ、8000万席の大台に届かず

作成者: John Grant|2021/07/30 3:38:24

総座席数は、さまざまな地域で典型的な増減がみられたなか、7980万席で落ち着く

航空会社のキャパシティは今週、2020年3月16日以降で、最多となりました。また、より前向きなニュースとして、多くの国がロックダウンを緩和するなか、国際線のキャパシティが過去10週間で80%以上増加しています。いくつかの主要市場が今後数週間で規制を緩和することから、国際線のキャパシティは7月最終週までに週2400万席となり、現時点よりもさらに400万座席増える見込みです。

ただし注視すべき点として、航空会社は各国の規制の状況に合わせてキャパシティを減らし続けており、7月は約400万席、8月は800万席以上が削減されています。一例としては、西ヨーロッパとアメリカ間の今週のキャパシティは約74万席で、8月中旬までに965000席に増加する見込みですが、アメリカ当局が海外パスポート保持者の入国を許可しない限り、25万席を追加する意味はないとみられます。

 

【グラフ1】 月次の定期航空便キャパシティ(2019年1月~2021年9月)

Source: OAG

今週は、各地域でキャパシティが大幅に削減されています。前週比のキャパシティが減少している3つの地域全てで、2桁の減少が報告されており、東南アジア地域で26%減、アフリカ南部地域で14%減、南西太平洋地域で11%減となっています。これに南米地域が加われば、フルセットがそろってしまうところでした。

北東アジア地域では約93万席が追加され、現在のところ世界のキャパシティの4分の1以上を占めています。この地域の主要3カ国の市場は全て、国内線市場の規模の大きさから利益を得ています。北東アジア地域で現在提供されているキャパシティの実に97%が国内線向けであり、国際線のキャパシティは20201月の640万席と比べて、今週はわずか716000席でした。この地域は比較的好調ですが、国際線キャパシティの回復にはまだ時間を要するとみられます。

多くの国がヨーロッパはその定義上、単一市場であるとみていますが、西ヨーロッパは単独で最大規模の国際線市場であり、約1020万席を提供し、この地域の全座席数のうち3分の2を占めています。夏の旅行シーズンのピークを前に休日旅行客が海辺の行楽地に向かうため、この国際線のキャパシティのうち大部分(70%)が、西ヨーロッパ地域内で提供される予定です。

【表 1】 地域別定期航空便キャパシティ

Source: OAG

中国におけるキャパシティはここ数週間で増加しており、今週80万席が追加され、6月初め以降では300万席増えています。中国の主要航空会社の機体平均稼働率は低いままですが、その結果、蛇口をひねるように必要に応じて席数を増減させることができています。この方法で採算が取れるかどうかについては議論の余地がありますが、収益は上がっています。

一部の市場で渡航規制が緩和されるなか、世界のトップ20に入る西ヨーロッパの全ての主要市場で、前週比のキャパシティが増加しています。また、一部の航空会社がやっと運航を再開し始めたこともとてもいいニュースです。イギリスのJet2も運航を再開しました。ライアンエアーは、ヨーロッパに多くのベースがあり、西ヨーロッパで最大手の航空会社となっています。供給席数も2位の航空会社にある程度の差をつけており、ライアンエアーは今週約220万席を提供する一方で、2位のターキッシュ・エアラインズのキャパシティは約130万席となっています。イージージェットの席数は週100万席を下回っており、今週はキャパシティの増加はほとんどみられていません。

インドネシアとオーストラリアでは今週、異例の数字が報告されています。両方の市場で新たにロックダウンが開始されたなか、インドネシアではキャパシティが急減しています。WHOの最新のデータによると、インドネシアでは新規患者が約38124人報告されている一方で、オーストラリアではわずか44人にとどまっています。比例していないとみられますが、両方の国で同様のロックダウンが実施されています。インドネシアに関して言えば、これまでの傾向から、弊社ではキャパシティは急速に回復すると見ており、希望が持てます。

しかし、オーストラリアでは、カンタス航空さえも2022年まで国際線の運航を停止するとしています。コロナ感染者ゼロを目指す野心的な戦略は素晴らしいのですが、現実的とはいえません。OAGのウェビナー(7月14日分では、この件について、さらに、現在何が起きているのか、実際のところ何が実現していないのかについて興味深い洞察を提供してくれるGary Bowerman氏に話を伺っているので、ご興味のある方をそちらをチェックしてみてください。

【表 2】 国別キャパシティ上位20市場

Source: OAG

トップ10の航空会社は今週も変わりなく、各航空会社はそれぞれの順位で落ち着いているようで入れ替わりはありません。また、新たにトップ10入りする航空会社もなさそうです。11位に付けているインディゴのキャパシティは週100万席強にとどまっており、10位のターキッシュ・エアラインズに追いつくにはキャパシティを50%追加する必要があります。

トップ10の航空会社が深刻なダメージを受けているなか、未だに運航を再開するのに苦労している航空会社もあります。かつては週100万席以上を提供していた航空会社で、依然としてその30%未満しか提供できていない航空会社が多数あります。全日空、エア・カナダ、ブリティッシュ・エアウェイズは今のところ、「行き詰まり」グループのメンバーです。同じようにこのリストに追加される航空会社として、エアアジアのさまざまな子会社、マレーシア航空、日本航空、エティハド航空、ライオン・エアが挙げられ、引き続き多くの航空会社が並大抵ではない困難に直面していることは明らかです。

より前向きなニュースとして、2019年7月および2020年1月の両方と比較してキャパシティを増やしている、「進展が見られる」グループに入っている航空会社もいくつかあります。こうした航空会社としては、春秋航空、ビバアエロブス、ポベーダ航空、アレジアント・エアが挙げられます。これらの航空会社には大規模な国内線市場を持っているという共通点があります。

 

【表3】航空会社別キャパシティ変動上位10社(2021年5月~8月)

Source: OAG

わずかな進展が見られたこの週は、控えめながらも楽観的になれた1週間といえます。しかし、現実的な問題は残っており、あらゆる国籍の人々の米国および中国への入出国が許可されない限り、この業界の回復は見込めません。ロックダウンや規制は不合理な行動を生み出すだけです。例えば、アメリカに入国したい国際渡航者は、メキシコで1週間過ごしさえすれば、その後自由にアメリカに入国することが可能とみられます。

いざカンクンへ!