東京オリンピックに航空市場の復調は必要?

2021/02/05 6:26:36 / by Becca Rowland

Topics: Airlines, COVID-19 Recovery

Becca Rowland

Written by Becca Rowland

東京オリンピックは2020年に開催されず、現在は2021年に開催されるかどうかも定かではない状況にあります。主催者の主な懸念点は、明らかに新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大するリスクですが、少なくとも部分的には復調を示している世界の航空市場に、このイベントはどの程度依存しているのでしょうか。オリンピックとはつまるところ、世界規模で行われる大規模な国際イベントといえます。このことから、大会の成功は、世界中からどれだけ多くの訪問者を得られるかどうかにかかっているとも考えられます。しかしそれは本当でしょうか?通常、オリンピック開催時には約1万4000人のアスリートが参加し、加えてサポートチームも同行します。しかしこの人数自体は、航空業界にとってはそれほど膨大な数ではありません。東京羽田空港などの空港では、2019年にかけては毎月平均700万人の乗客がみられました。オリンピックが開催されることで、開催国においてさらに多くの外国人渡航者が期待できるのでしょうか?その答えは「イエス」でもあり「ノー」でもあるといえます。

ロンドンオリンピックの教訓

2012年7月と8月のロンドン発着の航空旅客数データは、2011年7月と8月と比較して、1.4%の利用者の増加があったことを示しています。ただし、このデータの内訳をみると、英国発の旅客数は2.4%増、つまり26万人の増加であり、外国人渡航者は0.2%の増加となっています。言い換えると、英国人の出国者数は通常よりわずかに増加したものの、外国人渡航者数にほとんど変化がみられませんでした。

このデータを出発国別に見ていくと、各国ごとに異なる行動パターンが存在することが明らかとなりました。ロンドン発着便の最大マーケットであるスペインの旅客数は、2012年7月と8月には大きく落ち込みました。大会期間中に英国に帰国しないことを選択したスペイン在住の英国人は、航空券の価格高騰がその延期の背景にあったのでしょうか?ドイツ人渡航者は増加しましたが、アメリカ人の渡航者は前年よりも減少しました。当時は、航空運賃やロンドン内ホテルの宿泊費が高騰するケースが多くみられました。このデータからは、主にオリンピックの影響でどれだけ航空旅客数に変化がみられたかは確かに不明といえます。Visit Britainは、全体の5%である47万人の渡航者が、主にその年のロンドンオリンピックやパラリンピックへの参加、観戦、または関連業務を目的として渡航していたと報告しています。

top-20-countries-of-origin-passengers-to-from-london-july-august-2012

 

リオ五輪も同じ状況だったのか?

リオデジャネイロオリンピックの際には、異なる傾向がみられました。このブラジルのオリンピックは、201685日から21日にかけて開催されました。20168月のリオデジャネイロ発着便の総旅客数は、20158月と比較して0.3%減少しました。この内訳を見ると、ブラジル発の渡航者は6.7%減少しており、国外からの渡航者は61%増加していました。

top-20-countries-of-origin-passengers-to-from-rio-august-2016

 

国際航空便は、ブラジル大会を円滑に進めるうえで重要な役割を果たしていたかもしれませんが、ブラジルの航空旅客市場は、通常時には国内線に大きく依存しており、20158月には、リオデジャネイロの空港の旅客の90%以上の出発地を、ブラジル国内の空港が占めていました。このため、航空旅客数の増減をみると、20168月には、リオデジャネイロを発着するブラジル国外との航空便において、123000人の増加がみられましたが、ブラジル発の旅客数は129000人減少しました。

 

 

August 2015

August 2016

August 2017

Passengers to/from RIO

2,130,766

2,125,012

1,960,275

Of which

Brazil Point of Origin

1,929,234

1,800,362

1,784,159

 Foreign Point of Origin

201,532

324,650

176,116

 

August 2016 vs 2015

August 2016 vs 2015 %

August 2017 vs 2016 %

Passengers to/from RIO

-5,754

-0.3%

-7.8%

Of which

 Brazil Point of Origin

-128,872

-6.7%

-0.9%

Foreign Point of Origin

123,118

61.1%

-45.8%

 

東京が抱える不安

それでは、夏季オリンピックが成功を収めるうえで、世界の航空市場が復調し、稼働することはどれほど重要なのでしょうか。おそらくは、それほどまでに重要ではないといえます。当然のことながら、アスリートとそのサポートスタッフは、日本と行き来をする必要がありますが、航空市場において、そのボリュームは比較的少数です。通常は、東京の空港を利用する旅客の約8割は、日本の空港が出発地です。その数は2020年8月に60%減少しましたが、それでも日本の空港を出発地とする旅客数は、前年8月の国外空港発の旅客数の約2倍となっていました。日本国内では依然として多くの人々がフライトを利用しており、可能な状況かつ許可されることが前提ではあるものの、スタジアムを満員にすることも可能といえます。首都圏で先日、記録的な数の新規症例が発生した後に緊急事態宣言が出されたことは憂慮すべきことかもしれませんが、日本にはパンデミックに対処した実績があり、他の多くの国と比較して、同国の症例数は比較的少ない状況にあります。

 

重要なのはレガシー

私たちの大多数がこの夏、安全が確保された自宅から東京オリンピックを観戦することになったとしても、日本にとっては大成功といえます。ロンドンオリンピックの主催者は、大会後に残るものを意味するレガシー(遺産)について、多くのことを語っています。ロンドンオリンピックの翌年の7月と8月には、同市への航空旅客数は全体で3.6%増加し、国外からの旅客数は5.2%増加しました。日本は国際航空旅客数に関して野心的な目標を掲げており、パンデミックにより目標達成は非常に困難な状況にありますが、日本政府がオリンピックに関する具体的な準備を整え、私たちのリビングやスマートフォンに直接ストリーミング配信することができれば、私たちの全員が今後、日本を訪問したいという気持ちになるはずです。

 

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