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コロナウイルス:中国の航空会社に大打撃

作成者: John Grant|2020/02/19 1:55:37
わずか5週間前まで、中国の国際航空市場は世界第3位でしたが、現在では25位にランクダウンしてしまいました。これはポルトガルよりも若干低く、ベトナムを少し上回るという位置となり、わずか数週間のうちに大きく変化してしまいました。
世界のキャパシティも引き続き減少傾向
2月17日の週の最新のデータによると、中国の国際線キャパシティは週に27万席減少しており、1月20日以降全体で約170万席減っています。減少率は80%近くにもおよび、特に日本、タイ、台湾路線が大打撃を受けています。日本の場合、キャパシティは一週間前に比べ約36%減、4万7,700席程度の減少となります。

Chart 1 – 航空会社の中国発着路線のキャパシティ

中国国内市場においても、1月20日の週と比較すると約1,040万座席の削減がみられます。国際線のキャパシティが1席減るごとに、国内線のキャパシティが6席程度減少ている計算になります。一例を挙げると、中国東方航空のキャパシティは、5週間前と比較して190万席以上減少しており、一日あたりにすると27万席以上の減少です。

 

日本とタイへの更なる影響
 
これまでにも、中国に地理的に近い市場におけるウイルスの波及効果について言及してきましたが、以下の表は、中国発のデスティネーション上位10市場においてどれだけのキャパシティが喪失したかの推移を示しています。
 
Table 1 – 中国発の国際線座席数上位10市場の推移

日本は1週間あたりのキャパシティが約24万5,000席、タイは約23万6,000席の減少となり、キャパシティの減少値ではワーストとなっています。一方、減少率のワーストは台湾がマイナス90%、香港がマイナス85%以上となり、2国合わせると25万席ほどの削減です。
 
 
中国の航空会社は世界ランキングで急落
収益が低いシーズンに、各航空会社にとって今回の影響は甚大であることは明らかです。また、キャパシティの観点では搭乗率の低下がおよぼす影響が加味されておらず、事例からは、運航中のフライトでは5週間前に比べて搭乗率も大幅に減少していることが示唆されています。
中国東方航空と中国南方航空は、国際的な観点から最も甚大な影響を受けた航空会社であり、両社ともコロナウイルスの影響により、週あたり20万座席以上の削減を余儀なくされています。これを踏まえ、中国南方航空は現在、国際線でエア・アスタナよりも週あたり約800席多い座席数で運航しており、世界ランキングでは中国東方航空がチュニスエアの113位をわずかに上回るランキングとなっています。
Table 2 – 中国発の国際線運航の航空会社上位10

 

中国国内キャパシティのさらなる削減

今回の混乱の終息を探ることは、航空会社が危機にどのように対処しているかを知る手がかりにもなります。中国の国内では、来週にはキャパシティが回復するとの見通しがあるようですが、OAGでは、今週はさらにキャパシティが削減されると予想しています。

Chart 2 - 中国発着の航空会社のキャパシティ(4月20日まで)

国際市場では、IATAの夏シーズンの開始に合わせて、ほとんどの海外航空会社が3月末までサービスを停止するという、現実的なアプローチがとられています。現時点では3月末以降に予定されている夏季スケジュールに大きな変化はないと考えていますが、現況が改善しない限り、2月末から3月初め頃に、追加の動きがある可能性があります。

経験上、コロナウイルスほど世界のキャパシティに深刻な影響を及ぼした出来事はありません。今回の影響は、航空市場全体における中国市場の重要性と、世界的な成長を表しています。最終的には市場は回復するでしょうが、短期的には、一部の航空会社への損害を及ぼし、長期的には成長に対し深刻な影響を与える可能性があります。